第三章 菌類図譜とは

菌類図譜とは

熊楠は、帰国後、隠花植物の採集に精を出しました。この中でも大量の資料が残されているのが菌類です。熊楠は日本の菌類の多様性に気づき、採集された材料に基づいてそれを記録しはじめたのです。

菌類図譜は、採集された材料を、その特徴とともにA4程度の厚紙に描画・記載したものです。資料の識別のためF(Fungi菌類の頭文字と思われる)を付した番号が与えられており、典型的には次の4つの要素を含みます。

  1. きのこ自体の乾燥標本(多くはスライスされたきのこ)を貼り付けたもの
  2. 彩色図(きのこの水彩画。乾燥してしまうと生物学的特徴が失われるので、これを水彩画によってとどめたもの)
  3. 胞子(雲母板に胞子を落下させたものを紙で包んだもの)
  4. 記載:英文で試料の菌学的性状を記したもの

しかし、これらの4つが必ずあるとは限らず、一部の要素が欠けているもの、1枚のシートにおさまらず、複数のシートにまたがっているものなど、おそらく紙資源の節約のため、複数のF番号が1枚のシートに集めたもの、などがあり、管理を難しくしています。

菌類図譜の4つの要素(菌番号、記載、胞子、標本)の例
菌類図譜の4つの要素(菌番号、記載、胞子、標本)の例

菌類図譜のデータベース化

1995年までに国立科学博物館にすでに保管されていた約4500枚のシート(これを第1集とします)に加え、2014年までに見いだされ、国立科学博物館に保管された約750枚のシート(これを第2集とします)をまとめて資料をデジタル化することを試みました。

まず、シートの画像のデジタル化です。資料のイメージをスキャナでデジタル化しました。第1集については、この作業は、すでに2002~2004年に行われていました。第2集については2015~2016年に新たに作業を実施しました。

次は各シートの文字情報のデジタル化です。記載にはほぼ一定の内容が書かれているとはいえ、位置がバラバラであったり、挿入や削除があったりとわかりづらく、しかもかなり文字にも特徴があるため、読み解くのは容易ではありませんでした。しかし、いずれのシートもすでに読み解いた資料(翻刻)があり、第1集については、すでに大部分のデジタル情報化も行われていました。そこで、新たに第2集の翻刻資料のデジタル情報化を行いました。以上によって、各シートのデジタル情報が画像情報と参照できるようになデータベースの作成を目指しました。

このデータベースは、まだ作成途上です。管理項目についても試行錯誤しながら、研究コミュニティで共有できるものとして完成をめざしています。一方、これに先行して、この場では集積されたデータからいくつかを選び、次章から公開しています。

菌類図譜データベースおよび電子展示作成の流れ
菌類図譜データベースおよび電子展示作成の流れ